請求できる損害
①私は交通事故によってケガをしました。どのような請求ができるのでしょうか?
- 1.治療費,入院付添費・通院付添費等
- 実際に病院に入院・通院した場合にかかる費用などです。
- 2.休業損害
- ケガにより働けなかった場合の収入の喪失分です。
- 3.後遺障害による逸失利益
- 身体に後遺障害が残り労働能力が減少してしまった場合に,将来発生するものとして認められる収入の減少のことです。
- 4.傷害慰謝料
- 病院に入院・通院している間に受ける精神的苦痛を賠償するものです。
- 5.後遺障害慰謝料
- 後遺障害が残ってしまったことに対する精神的苦痛を賠償するものです。
②私は交通事故後、PTSDとなってしまいました。損害賠償を請求できるのでしょうか?
請求できる場合はありますが,困難であるのも実情です。PTSDの診断基準を厳格に適用すべきとした東京地裁平成14年7月17日判決以降は、PTSD該当性を否定する判断が比較的多くなっています。
PTSDが後遺障害にあたると判断されれば,事故による収入減少部分については損害賠償を請求できますし(逸失利益),精神的苦痛の賠償を求めることもできます(後遺障害慰謝料)。
しかし,PTSDを交通事故による後遺障害として認めてもらうには,さらに,事故との因果関係を証明しなければなりません。通常の一般人は,私生活上それなりのストレスは感じているのが実情で,PTSDという診断が出ても,それが果たして本当に交通事故を原因とするものか,因果関係の証明が困難となっています。
実際に裁判で争われたケースでは,後遺障害と認められない場合が多く、たとえ認められても個人の精神的脆弱性を理由に減額されてしまうのが実情です。
③交通事故で車が破損した場合は,どのような請求ができるのでしょうか?
車の修理代等を請求することができます。
もっとも、車が大破してしまっても,必ずしも修理代全額や新車購入代金を受け取ることができるわけではありません。壊れた車の対価として受け取ることができるのは,原則として,車両の時価額までとなり,たとえば,車の時価が50万円である場合に,修理代100万円を払えということはできません。
また、車の対価以外にも,「その他費用」として,次のとおり賠償金を受け取ることができる可能性があります。
- 1.登録手続関係費
- 車が廃車になった場合,新車買い替えのための費用(登録手数料,車庫証明,納車手数料,自動車取得税など)は,賠償が認められます。
- 2.評価損
- 事故車を修理して元の状態に戻したとしても,修理技術上の限界から、商品価値は低くなってしまいます。「事故車」は,一般に査定が低くなりますので,これを「評価損」として請求できる場合があるのです。最近は昔より認められ易い傾向になったとはいえ、保険会社は評価損の支払に簡単には応じませんので,これを認めた裁判例や「事故前の価格と事故車の価格の差額分」を書類にして請求するなどの対応が必要です。
- 3.代車使用料
- 事故により車が使えないため,修理期間中や新車購入までの間,レンタカーを借りるような場合に支払われる費用です。代車使用料を請求する際も,保険会社の了承を得る他,電車やバスなどの代替手段がないか,代車使用期間が長すぎないか等代車使用の必要性を認めてもらう必要がある。自家用、いわゆるマイカーの場合、裁判所や保険会社はその必要性について消極的なのが現状です。
- 4.慰謝
- 原則として、物損事故で慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)は認められません。極々例外的に,「かけがえのない芸術作品が壊れた」などの特別な主観的・精神的価値を有するケースでは,慰謝料が認められる可能性はあります。自動車については、評価損に慰謝料的な側面があるので、評価損として交渉する方が現実的といえます。
④加害者に弁護士費用の全額を求めて請求することはできますか?
交通事故の裁判の場合,あなたが負担した弁護士費用相当額が損害として認められることがあります。
もっとも,損害として認められるのは,あくまで弁護士費用「相当額」であり,弁護士との間の契約上の報酬額がそのまま全額損害として認められるわけではありません。裁判例の傾向としては,認められた賠償額の1割程度の金額を,損害賠償額として認めるものが通例となっています。
⑤症状固定の後も痛みが残ってしまいました。どうしたらいいでしょうか?
後遺障害につき等級の認定が出れば,後遺障害による慰謝料や逸失利益を請求することができますので,まずは後遺障害診断書を作成してもらい,任意保険会社(事前認定の場合)あるいは自賠責保険会社(被害者請求の場合)に必要書類を提出してください。