― 破産手続と申立代理人弁護士の役割 ―
法人(会社)・個人を問わず、借入金の返済や支払いが難しくなり自己破産を考えている方の中には、「破産をすると何もかも失ってしまうのではないか」「破産後の生活はどうなるのか」と不安を感じている方も少なくないかと思います。
しかし、破産は単に借金を整理するだけの制度ではありません。
今回は、破産法が旨としている「経済生活の再生」という考え方と、破産手続における弁護士の役割についてご説明します。
1破産は、生活を立て直すための制度でもあります
破産法は、破産手続の目的として、債務者(破産される個人・会社)の財産を適正かつ公平に清算することとあわせて、債務者の「経済生活の再生の機会の確保を図る」ことを定めています。
公平な清算
機会の確保
つまり破産法は、残っている財産を債権者のために公平に清算することだけでなく、返済が困難になった個人が債務を整理して経済的に再出発することも、重要な目的として掲げているのです。
返済や支払いが難しくなっているにもかかわらず無理にこれを続けようとすると、生活費が不足して健康的な生活を維持できなくなってしまったり、新たな借入れを重ねてしまったりと、かえって状況が悪化してしまうことがあります。そのような状態を一度整理し、生活を立て直す機会を設けること自体、破産法が予定していることなのです。
2自己破産をしても、すべての財産を失うわけではありません
「自己破産をすると、今ある財産をすべて失ってしまう」と思われている方もいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。
破産法は、一定額までの現金や、生活や仕事に欠かせない家財道具・仕事道具など、破産後の生活に必要となる一定の財産を破産者の手元に残すことを認めています(これを「自由財産」といいます。)。さらに、裁判所の判断により、破産者の生活状況や今後の収入の見込みその他の事情を考慮して、手元に残すことのできる財産の範囲が広げられることもあります(これを「自由財産の拡張」といいます。)。
自由財産……一定額までの現金や、生活・仕事に欠かせない家財道具・仕事道具など、破産後も手元に残せる財産
自由財産の拡張……生活状況や今後の収入の見込みなどを考慮して、裁判所の判断で手元に残せる範囲が広げられること
会社が破産する場合、代表者の方は会社の借入れについて連帯保証をしていることが多く、会社と併せて代表者ご自身の破産手続を検討することになるのが一般的です。その場合も、代表者の方のその後の生活に必要な個人財産については、この自由財産の考え方が同じように当てはまります。
破産手続が終わっても、その後の生活が成り立たなければ、経済生活の再生にはつながりません。そのため、破産後の生活を見据えて、法律上残すことのできる財産を適切に検討することは、とても重要です。
「破産するのだから仕方がない」と最初から諦めるのではなく、何を残すことができるのか、生活の立て直しのためにどのような制度を利用できるのかを、一つずつ確認していく必要があります。
3破産手続では、申立てまでの準備が非常に重要です
自己破産は、必要書類をそろえて裁判所に提出すれば終わる、という単純な手続ではありません。
現在どのような財産があるのか、借入れが増えた経緯はどのようなものか、現在の収入や支出のもとで生活を立て直すことができるか、免責(個人の方について、裁判所の決定によって一般的な借金の支払義務を免れること)との関係で問題となり得る事情はないかなど、現在の状況を整理した上で、適切な資料を整えて裁判所に説明する必要があります。
また、自己破産を考え始めた段階で行った財産の処分や、一部の債権者にだけ返済する行為などが、その後の破産手続で問題となってしまうこともあるため、十分な注意が必要です。
会社の破産の場合には、これに加えて、事業をいつ停止するのか、従業員や取引先にどのように対応するのかといった、申立てまでの段取りが特に重要になります。従業員の方にとっては、離職後の手続がその後の生活に直結しますので、未払賃金立替払制度の利用なども含め、できる限りの配慮をもって進める必要があります。
一方で、免責との関係で問題となり得る事情があったとしても、それだけで直ちに自己破産を諦めなければならないわけではありません。例えば、免責不許可事由(免責が認められないことがある事情)がある場合でも、事情によっては裁判所の裁量により免責が認められる制度があります。
そのため、自己破産を検討する場合には、できるだけ早い段階で現在の状況を整理し、資料を整えるとともに、具体的な状況に応じてその後の対応を検討することが大切です。
4破産事件における弁護士の役割
自己破産は法律に基づく裁判手続ですから、弁護士が自由に結論を決められるものではありません。
もっとも、ご依頼者の事情は一人ひとり異なります。どの財産について検討が必要なのか、自由財産の拡張を求める必要があるのか、免責についてどのような説明や資料を準備すべきなのかなど、検討すべき事項も事案ごとに多岐にわたります。
そのため、破産事件における申立代理人としての弁護士の仕事は、単に申立書を作成することにとどまりません。ご依頼者の生活状況や財産状況、借入れに至った事情などを丁寧に確認し、法律上利用できる制度を適切に活用した上で、その事情を裁判所や破産管財人に正確に伝えていくことが重要です。
経済生活の再生に欠かせない財産を適切に確保し、必要な制度を利用しながら、破産手続が終わった後にご依頼者が無理なく生活を立て直していける状態を目指すことも、破産事件を扱う弁護士の重要な役割であると考えています。
5おわりに
自己破産を考えなければならない状況のなかで、今後の生活について大きな不安を感じるのは自然なことです。
しかし、破産法そのものが、債務者について「経済生活の再生の機会」を確保することを目的として掲げています。自己破産は、過去の債務を整理するためだけの制度ではなく、その後の生活を立て直し、未来に向けて新たなスタートを切るための制度でもあります。
返済を続けることが難しいと感じている方や、会社の資金繰りに困難を感じている経営者の方は、弁護士との相談を通じて、一度現在の状況を整理し、自己破産を含めてどのような選択肢があるのかを検討されることをおすすめします。ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。
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