最低賃金制度について~制度概観・派遣労働者の場合は?~

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弁護士の古林でございます。

さて、神奈川県の最低賃金の改訂額が1040円に改訂されました。1012円から28円の値上げとなりました。本稿では、改めて、最低賃金制度について知っておくべき事項を整理します。

○最低賃金制度とは
 最低賃金制度は、労働契約における賃金の最低額を国が定める制度です。
 使用者は、国が定める最低額を支払う必要があり、労使間で最低賃金を下回る契約をしても無効となります。最低賃金を下回る賃金を支払っていた場合には、最低賃金との差額を支払わなければなりません。支払わない場合には、罰則が科せられます。

○最低賃金の種類
 最低賃金には、地域別最低賃金と、特定最低賃金の2種類があります。
 地域別最低賃金は、地域ごとの物価や実情を踏まえて都道府県ごとに定められます。同じ都道府県内の事業場の全ての労働者の賃金について適用されます。
 特定最低賃金は、特定の産業にのみ適用される最低賃金です。地域別最低賃金よりも高い水準の賃金が必要と認められた産業(主に製造業)について定められます。(ただし、令和3年10月1日時点の東京都及び神奈川県では、特定物売買最低賃金よりも地域別最低賃金の方が高額です)。

○最低賃金が適用される労働者
 最低賃金が適用される対象者は、正社員、パートタイマ―、アルバイト、派遣社員等、雇用形態関係なくすべての労働者が該当します。外国人や外国人技能実習生についても同様に適用されるので、注意が必要です。なお、特定最低賃金では、特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます。
 派遣労働者については、派遣先の最低賃金が適用されます。例えば、神奈川県在住の労働者が、東京都の派遣会社から、千葉県のオフィスに派遣されて勤務する場合、派遣先の事業場である千葉県の最低賃金が適用されることになります。そのため、派遣会社は、労働者の派遣先の事業場の最低賃金額を個別に把握する必要があります。

○最低賃金額の計算・比較方法
 最低賃金と比較すべき時給は、以下のように計算されます。
・日給制:日給÷1日の所定労働時間
・月給制:月給÷1ヶ月の平均所定労働時間
・日給制、月給制が併用されている場合には、上記に従いそれぞれ時間額に換算したうえ で、合計したものと最低賃金額を比較します。
・出来高払制や請負制などによる賃金は、賃金総額を出来高払制等により労働した総労働 時間数で割り時間当たりの金額に換算します。

○最低賃金から除外される賃金
 以下のような手当は、最低賃金の計算からは除外されるので、注意が必要です。
 ・臨時に支払われる賃金(慶弔手当等)
 ・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
 ・時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金等
 ・精皆勤手当、通勤手当、家族手当

○地域別最低賃金の適用除外
 以下に列挙するような、一般の労働者よりも労働能力が低いとされる労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、特例として個別に最低賃金の減額が可能です。特例を使用する使用者は、特例許可申請書を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由し、都道府県労働局長へ提出する必要があります。以下のような場合です。
 ・精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
 ・試用期間中の方
 ・認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
 ・軽易な業務に従事する方
 ・断続的労働に従事する方

○特定(産業別)最低賃金の適用除外
 特定最低賃金の適用外となる労働者は、以下のとおりです。
 ・18歳未満又は65歳以上の方
 ・雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方
 ・その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方
 
最低賃金の引き上げは、格差是正策として世界的な傾向となっており、日本政府も早期に全国平均の時給を1000円とすることを目指しています。改めて、給与体系に関する法的リスクをチェックし、経済動向に適切に対応することが大切です。

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