弁護士の瀬野 陽仁です。
本日は、家賃を滞納した入居者に対し、訴訟から強制執行まで進めて明渡しを完了させた解決事例をご紹介いたします。
1事例の概要
| 相談の種類 | 不動産(建物明渡し・賃料滞納) |
|---|---|
| ご相談者 | 個人で分譲マンションの一室を賃貸されているオーナーAさん(県内在住) |
| 相手方 | 入居者(単身の男性) |
| 主な争点 | 賃料滞納による賃貸借契約の解除の可否/信頼関係の破壊の有無 |
| 解決方法 | 契約解除の通知 → 建物明渡請求訴訟 → 判決 → 強制執行(断行) |
| 解決までの期間 | ご依頼から明渡し完了まで約9か月 |
| 結果 | 明渡しを命じる判決を取得し、強制執行により明渡しを完了。未払賃料及び明渡し済みまでの賃料相当損害金についても債務名義を取得。 |
2ご相談の背景・経緯
Aさんは、所有する分譲マンションの一室(単身者向けの一室)を、月額7万円台の賃料で入居者に貸していました。
この入居者は、以前から賃料の支払が遅れがちで、Aさんはそのつど支払を求めてきました。ところが、ある年の秋に賃料の一部を支払ったのを最後に、その後は一切支払われなくなってしまいました。
Aさんは繰り返し支払を求めましたが状況は改善せず、それどころか、入居者側に弁護士が就き、退去にも応じない姿勢が示されるに至りました。ご自身での対応に限界を感じられたAさんは、当事務所にご相談に来られました。
3ご相談時のお悩み・ご不安
- 賃料が何か月も入ってこないのに、退去してもらう見通しが全く立たない。
- 相手方に弁護士が付いてしまい、自分ひとりでは太刀打ちできない。
- そもそも、どの程度の滞納があれば契約を解除できるのかが分からない。
- 裁判をして勝ったとしても、本当に出て行ってもらえるのか分からない。
- 費用と時間がどれだけかかるのか、見当がつかない。
4当事務所のサポート内容
窓口を弁護士に一本化し、対応の主導権を取り戻しました
まず相手方代理人に受任通知を送付し、以後の連絡窓口をすべて当職に一本化しました。当事者どうしの直接のやり取りから離れることで、Aさんのご負担を減らすと同時に、その後の手続に必要な事実関係と証拠の整理に着手しました。
「解除が確実に届いた」状態を作りました
賃料滞納を理由とする契約解除は、解除の意思表示が相手方に「到達」して初めて効力が生じます。ここが崩れると、後の訴訟で解除の効力そのものが争点になってしまいます。
本件では、内容証明郵便が受け取られず保管期間満了で返送されるという事態が生じたため、同一内容の通知を別の方法でも重ねて送付して到達の事実を証拠化し、さらに期間を置いて二度目の解除通知も発しました。入口を固めたうえで訴訟に進んだかたちです。
内容証明郵便は、相手方が受け取らなければ「不在」のまま返送されてしまいます。解除通知は、届いたことを後から証明できる形で残しておくことが、その後の訴訟の成否と期間を大きく左右します。
訴訟を提起し、争点を「信頼関係の破壊」に集約しました
建物の明渡しに加えて、確定した未払賃料と、明渡し済みまでの賃料相当損害金の支払を求めて提訴しました。
相手方は争う姿勢を示しましたが、当事務所は、①これまでも支払遅延が繰り返されていたこと、②直近は賃料が全く支払われていないこと、③その状態が長期間継続していることを、契約書・入金履歴等の客観資料に基づいて時系列で整理し、賃貸人と賃借人の信頼関係はすでに破壊されていることを主張・立証しました。
早期解決のための和解案も並行して提示しました
裁判所での話合いの場では、Aさんのご意向を確認したうえで、明渡しの期限に猶予を設け、その期限までに明け渡してもらえれば未払賃料の支払義務を免除し、さらに引越しの一助として一定額をお支払いする、という譲歩を含む和解案を提示しました。時間をかけずに物件を取り戻すことを優先した判断です(結果として合意には至らず、判決手続に移行しました)。
判決取得後、強制執行を最後までやり切りました
判決では、当方の請求がすべて認められました。その後、確定証明・送達証明の取得、執行文の付与、強制執行の申立てと、明渡執行に必要な手続を順次進めました。
執行官による明渡しの催告(引渡期限の指定と、玄関への公示書の掲示)を経ても任意の明渡しがなかったため、期限の到来をもって断行(強制的な明渡し)を実施し、部屋の引渡しを受けました。
残置物の処理コストを抑えました
明渡執行で費用がかさむ最大の要因は、室内に残された家財の運び出しと保管です。本件では、執行の現場で残置物の状況を確認し、所有権が放棄されたものとして扱える状況を整えたことで、保管手続を経ずに処分することができました。裁判所に納めた予納金7万円のうち、実際にかかった執行費用は約5万円で、残額は返還されています。
5解決の結果
- 提訴から約3か月で、明渡しを命じる判決を取得(未払賃料と、明渡し済みまで月額7万円台の賃料相当損害金の支払を命じる内容も併せて認められました)
- 判決後、強制執行の断行により明渡しが完了
- ご依頼から明渡し完了まで、およそ9か月
- 残置物も保管手続を経ずに処分でき、執行費用は約5万円で収束
- 物件を原状に戻し、あらためて賃貸に出せる状態を回復
6担当弁護士からのコメント
家賃の滞納は、放っておいても状況が良くなることはまずありません。「今度こそ払うと言っているから」と待っているうちに滞納額だけが積み上がり、回収も退去も難しくなっていく——これが最もよくあるパターンです。滞納が二か月続いたら、それはすでに契約解除を検討すべき段階だとお考えください。
明渡しの手続で最初の関門になるのが、契約解除の通知が相手方にきちんと「届いた」と言えるかどうかです。本件でも、内容証明郵便が受け取られないという事態が生じましたが、送付方法を工夫して到達を証拠化したことで、訴訟でこの点が争点になることを避けられました。地味に見えて、勝敗と期間を左右する部分です。
そしてもう一つ、明渡しは判決を取って終わりではありません。判決に相手方が従わなければ、確定証明・送達証明の取得、執行文の付与、強制執行の申立て、催告、断行、さらに残置物の処理まで進めて、はじめて部屋が戻ってきます。ここまでの道筋を最初から見通して動くかどうかで、かかる時間も費用も大きく変わります。本件では、残置物の処理まで含めて設計できたことで、執行費用を抑えたまま9か月で決着させることができました。
滞納が続いている、退去してもらえない、そうしたお悩みがありましたら、状況が固まってしまう前にご相談ください。
担当:弁護士 瀬野 陽仁
7同じようなお悩みをお持ちではありませんか
- 入居者が家賃を払ってくれない
- 退去してほしいのに応じてもらえない
- どのくらい滞納されたら契約を解除できるのか知りたい
- 判決を取った後、実際に出て行ってもらえるのか不安
- 出て行った後に残された家財をどう処分すればよいか分からない
解除の可否の見極めから、訴訟・強制執行・残置物の処理まで一貫して対応いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
042-704-6577
法律事務所S(相模原)/建物明渡し・賃料滞納のご相談を承ります。
※守秘義務のため、事案の一部を変更しています。また、本記事は個別の事案における結果をご紹介するものであり、同様の結果をお約束するものではありません。